プロンプト力の前に必要な、「伝わる指示」のつくり方

「AIがわかってくれない」は、よくある悩み

生成AIを使っていて、こんな経験はありませんか。
「お願いしたことと、少し違う答えが返ってきた」
「もっと具体的に書いてほしいのに、ふわっとした文章になった」
「何度聞き直しても、欲しい答えにたどり着かない」
便利なはずのAIなのに、思ったような回答が返ってこない。
すると、「AIって意外と使いにくい」「自分の業務には合わないのかも」と感じてしまうことがあります。
実は、これは珍しい悩みではありません。
ChatGPTへの不満を分析した研究では、107名のユーザーから511件の不満事例を集めて分析しています。その結果、ユーザーが最も多く感じていた不満は、ChatGPTが「自分の意図をうまく把握してくれないこと」でした。また、不満を解消しようとしても、72%は未解決のままだったと報告されています。
つまり、AI活用でつまずくポイントは、AIの機能不足だけではありません。
こちらが何を求めているのかを、AIに伝わる形で整理できているかも大切なのです。
プロンプト力の前に必要なのは、伝える力
生成AIを使うときに、よく聞く言葉のひとつが「プロンプト」です。
プロンプトとは、AIに対する指示文のことです。
「どんな聞き方をすれば、よい答えが返ってくるのか」
「どう書けば、AIが思い通りに動いてくれるのか」
そう考えながら、プロンプトの書き方を学んでいる方も多いのではないでしょうか。
もちろん、プロンプトの工夫は大切です。
しかし、AIを業務で活用するうえで本当に大切なのは、単に“上手な言い回し”を覚えることではありません。
その前に必要なのは、
相手に伝わるように、目的や条件を整理する力です。
AIにうまく伝えられないとき、実は人に対する依頼でも同じことが起きている場合があります。
AIへの指示は、社内の依頼とよく似ている

AIにうまく指示を出すには、次のような情報を整理する必要があります。
何をしてほしいのか。
誰に向けた内容なのか。
どんな条件があるのか。
どんな形式で出してほしいのか。
どこまで詳しく書いてほしいのか。
これは、AIに限った話ではありません。
社内で誰かに仕事を依頼するとき。
外注先に制作をお願いするとき。
上司に報告するとき。
お客様に説明するとき。
どの場面でも、相手に伝わるように情報を整理する力が必要です。
たとえば、「資料をいい感じに作ってください」とだけ伝えても、相手は困ってしまいます。
目的、対象者、使用場面、必要な項目、希望する雰囲気がわからなければ、期待どおりの資料にはなりにくいからです。
AIも同じです。
あいまいな指示を出せば、あいまいな答えが返ってきます。
伝える力は、業務を整理する力でもある
AIに伝える内容を考えていくと、自然と業務そのものを見直すことになります。
「この作業の目的は何か」
「誰のための資料なのか」
「最終的にどんな状態になればよいのか」
「判断基準はどこにあるのか」
「どこまでAIに任せて、どこから人が確認するのか」
こうしたことを整理する過程で、普段なんとなく進めていた業務の流れが見えてきます。
つまり、AIに指示を出す力は、単なる文章力ではありません。
業務を分解し、目的を明確にし、相手が動きやすい形に整える力です。
この力が身につくと、AI活用だけでなく、社内コミュニケーションもスムーズになります。
依頼の手戻りが減り、確認の回数が減り、仕事の進み方も変わっていきます。
AIに伝わらないことは、人にも伝わりにくい。
そう考えると、生成AIは「伝え方を見直すきっかけ」にもなります。
「伝わる指示」は、再現性のある仕事につながる

AI活用で大切なのは、一度うまくいった指示を、その場限りで終わらせないことです。
たとえば、毎月作成しているレポート、SNS投稿文、議事録、社内マニュアルなどは、指示の型を作っておくことで、次回以降も同じ品質で進めやすくなります。
指示を作るときは、次の5つを整理しておくと便利です。
目的: 何のために作るのか
対象者: 誰に向けたものなのか
前提条件: 必ず入れる情報や守るルールは何か
出力形式: 箇条書き、表、文章など、どんな形で出してほしいのか
注意点: 避けたい表現、確認が必要な点は何か
このようにテンプレート化しておくと、誰がAIを使っても一定の成果物を作りやすくなります。
これは、AIを“便利なツール”として使うだけでなく、業務の仕組みとして活用する第一歩です。
AI時代の伝える力は、現場を動かす力になる

生成AIの時代に必要な「伝える力」とは、きれいな文章を書く力だけではありません。
自分の頭の中にある目的や条件を整理し、相手が動ける形にして渡す力です。
その相手は、AIかもしれません。
社内のメンバーかもしれません。
外部のパートナーかもしれません。
AIをうまく使える人は、AIに魔法の言葉をかけているわけではありません。
業務の目的を整理し、必要な情報をそろえ、判断基準を明確にしているのです。
AIは、指示を出せば何でも完璧に理解してくれる存在ではありません。
だからこそ、「何を」「誰に向けて」「どの条件で」「どんな形にしたいのか」を整理して伝えることが大切です。
AI Mateでは、生成AIの使い方だけでなく、現場の業務に合わせた指示の整理、運用設計、仕組み化まで支援しています。
生成AIの活用や、社内の業務効率化にご関心のある企業様は、お気軽にご相談ください。
本記事では、ChatGPTユーザーの不満に関する研究として、Yoonsu Kim氏らの論文 “Understanding Users’ Dissatisfaction with ChatGPT Responses: Types, Resolving Tactics, and the Effect of Knowledge Level” を参照しています。
